神谷町にある和菓子店と和食店の店舗内装プロジェクト。
和菓子店のアプローチは、天井高さを抑えた立面的な曲面の左官天井・壁、モルタル刷毛引きの床、鏡板の框戸、光の揺らぐ表札照明、店内へ向かって曲がれる水路で暗い洞窟のように演出し、引戸を開けて橋を渡って店内へ。
内部は、天井高さを高くして出口に向かって開いた一つながりの柔らかな壁とし、ショーケース、神棚、レジ台、コーヒーコーナー、飾り棚、花飾り棚、和食店への隠し扉をその曲面壁に穿って配しました。
床は、敷き瓦・出口面は障子とし、漆喰のコテ跡のある曲面壁で空間を包み、寺社のような静謐さとふわっとした楽しさのある空間を目指しました。
和食店の客席は、土間から自然石の踏み石を上がったところの6席のカウンターになっています。
和紙クロスや粗目の左官、骨材入りの塗装などを用いて、トーンを落とした居心地のいい店内としました。
暗い店内でカウンターと調理台が光るような照明計画として、料理や料理人を照らすステージのように演出しました。調理台の背面はスチールの床柱と違い棚として、床の間の場所にコンロの調理台が置かれているような配置としています。
オープンな厨房の床は、客席より300低くすることで、座るお客と立っている店主の目線の高さを揃え、カウンター前の巾600の通路で店主は料理を供して話をしながら行き来します。
和菓子店と和食店は隠し扉で繋がっていて、和菓子店を和食店の待合いとしたり、和食店を和菓子店のイートインスペースにすることを想定しています。
厨房側でも和菓子店と和食店が一続きになっており、必要な厨房機器を共有しながら行き来できるようにしました。
2つのお店が表と裏方で繋がることでスペースを効率的に補い合い、それぞれ特徴のある空間の独立性を保ちながら拡大して有効的に使うことが出来ます。
所在地:東京都港区
用途:店舗(和菓子店+和食店)
工事:内装
床面積:95㎡(49㎡+46㎡)
構造:(鉄骨造)
竣工:2024.07
写真:井上登